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起業を目指す人のための「転ばぬ先の起業講座」
『 新会社法で会社設立ばかり目が向くが・・ 』
5月1日から新会社法が施行され、各地の法務局は新会社の設立・登記をす
る人で賑わっている。
今回、新たに制定された会社法を起業の目で整理すると、会社設立がとても
容易になり、その自由度も格段に高まった。
最低資本金規制が撤廃され、資本金1円から株式会社の設立が可能になっ
た。資金だけでなく人的にも、取締役3人以上、監査役1人以上という制限がな
くなり、起業家1人だけで株式会社が設立できるようになった。
資本金規制の撤廃に伴い、金融機関が厭々対応していた払込金の保管証明
も必要なくなる。会社の設立まで、払い込んだお金が使えないという不都合も
これからはなくなる。
また、類似商号禁止の規制撤廃によって、これまで同じ市町村内で同一の営
業内容なら、同一の商号登記が出来なかったけれど、これからはまったく問題
がななくなる。登記所での審査に時間と手間がかかる原因が、撤廃されること
になったのだ。
そこで気になるのが、これから起業しようとする人にとって、起業と同時に会
社組織を立ち上げるとよいのか、それとも自営業者として事業を始める方が有
利なのか?
株式会社にする利点は、対外的な信用度が高まること。ただ、株式、有限な
ど会社資産を大枠で別ける制度がなくなり、会社設立が容易になったことで、
以前ほど株式会社が持つ金看板の価値は薄らぐと思われる。
欠点は、利益が上がる上がらないに係わらず、毎年税金が課されること。株
式会社は、利益がゼロでも最低7万円の法人住民税がかかる。このほかに、当
期利益に対しては約33%の課税が課せられる。
また、法人としての会社に対する税金とは別に、会社から報酬を貰う経営者
に対しても所得税が掛けられる。
一方、自営業者にとっての利点は、利益があがらない限り税金を支払う必要
がないこと。また、青色申告の個人事業税の税率は5%が基本になっていて、
法人税と比較すると大幅に低いこと。
欠点としては、事業規模が大きくなった場合や大きな利益を生むようになった
場合、自営業者では対処しきれなくなる。
現状では、新会社法の施行により会社設立が大幅に簡素化されたとはいえ、
ゼロからの起業を行なう人にとって自営業者からのスタートの方が有利である
ことは上の比較を見てもらうと一目瞭然だ。
しかし、将来を見据えた場合、自営業者より株式会社の方が有利な場面が出
現する可能性もある。
一つは、株式会社の設立が大幅に容易になったことで、政府が政策的に自
営業者から株式会社への転換を促進する税制なり、優遇策を取る可能性があ
ること。金融機関の融資やネットショップの加盟店審査など個々のシーンでは、
既に自営業者に対する締め出しを行なっているところさえある。
二つ目は、極々近い将来に起こる可能性が高いインフレ下においては、利幅
の低い事業は淘汰される。最低でも、金利分以上の利益を上げておかないと
事業の存続はおぼつかない。すると、自営業で低い利益に甘えていると、事業
の継続が難しくなることもある。
帝国データバンクの調べでは、03年2月からの「最低資本金規制特例制度
(通称・1円起業)」により、3年2カ月の間に設立した会社約3万5千社のうち、
破産などの法的整理に至った会社は38社に留まるという。
大半は販売不振が原因のようだが、予想をはるかに上回る少なさに驚かされ
る。1円起業の場合、起業のためのアイデアや技術がありながら、資本力不足
の起業家にチャンスが与えられたこともあって、モチベーションの高い起業が多
かった。
新会社法の施行をきっかけにした会社設立の場合、器作りばかりが話題にな
っているが、実際のお客さん作りは大丈夫なのだろうか。多くのお客さん作りを
して、会社の運営が出来るかどうかを最重視した上で、会社の設立を考えるべ
きだろう。