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起業を目指す人のための「転ばぬ先の起業講座」
『 起業家・ホリエモンが犯した最初の失敗 』
『強固で安定した経営基盤を維持しつつ高成長を続けていくことです』
これは、ライブドアの経営方針である。この他には、会社の存在意義や社会的
使命を規定する経営理念も、将来の目指すべき姿を示すビジョンも、ライブド
アにはなかったようだ。
1月23日、ライブドア社長の堀江貴文氏が逮捕された。1996年4月の設立
以来、10年間で売上高約1000億円近い企業グループを作り上げた手腕は、
賛否両論はあるにせよ起業家としては大変なものである。
当講座としては一定の敬意を払いつつ、失敗した起業の一例として、ホリエモ
ンの経営手法を検証してみようと思う。
起業の参考事例としては、成功例より失敗例の方が、これからの起業を
考える上で役立つ重要ポイントが多い。特にライブドアならば、誰もが知って
いる事柄が多いので、格好のテキストとなりそうだ。
冒頭にも上げたように、経営理念もビジョンも持たない企業文化のない組織
は、結局、高成長を続けることによってお金を稼ぐこと以外に関心を示さなかっ
た。
このことが、表向きはIT企業を名乗っていながら、社内に技術担当役員も置
かず、財務・投資と営業担当だけの金融会社のような会社運営を行なう破目
になった。
ライブドアに社名変更する以前、オンザエッジの時代には、最高技術責任者を
置いていたのに、社名を変えた時期と軌を一にして、技術系企業からM&Aをメ
インとした金融・投資企業へと姿を変えていった。
このような時、一定規模の会社ならば、会社の方向転換を巡って、アクセルば
かりではなく、ブレーキを踏む役目の人間を意識的に置くシステム作りが求めら
れる。トラック理論とは、経営者がトラックにはねられて業務遂行不能に陥るリス
クまで考えるのが、マネジメントの世界だ。
98年9月、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンによって設立された米国・グーグル
の経営は、32歳の創業者二人と50歳のCEO・エリック・シュミットの3人によっ
て経営がなされている。起業に対する研究が進んでいる米国においては、一定
の企業規模になると、同世代だけによる企業経営は成長時期には威力を発揮
するが、停滞期には暴走することが多いとして、投資の対象から外されるケース
がほとんだ。
会社が社会的な存在である以上、常に起業家自身が、会社が暴走しないシス
テムを作り続けなければならない。
ホリエモンは設立時に志しを描くことを忘れたために、投資家を欺き、若い起
業家の夢を砕き、お金万能の誤った認識を子どもに与えてしまった。
ただ、これらマイナス面ばかりではなく、彼の起業を通じてプラスに作用した面
も上げてみる。
一つは、現在が時代の変り目で、若い会社の成長の余地がまだまだあること
を実証してくれた。世の中は、若い起業家の出現を待っている。
二つ目は、彼はIT技術から金融・投資会社へと転身させて失敗したが、IT技
術系のまま独自に技術の開発に磨きをかけていたら、大企業に伍してネット上
での存在感を高めていることができた。
最新のIT分野や、規制に保護された分野、旧態依然とした商慣行が幅を利か
せる分野では、まだまだ新規の起業ビジネスが成長する可能性がある。
最初の第一歩を誤ることなくスタートさせることで、ホリエモンより優れた起業
家の出現を日本の社会は期待している。