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『 ほりえもんは、ホントに起業家の鑑か? 』
堀江貴文氏が9・11の衆議院選挙に立候補することになり、近鉄球団の買
収、ニッポン放送の買収に続く三度目のマスコミ登場で話題を集めている。
個人資産2500億円とも3000億円とも噂される堀江氏は、1996年に24
歳でHPの制作会社、有限会社オン・ザ・エッジを設立して事業をスタートさせ
た生粋の起業家である。
彼のその後の事業展開が、果たしてこれから起業を目指す人の参考となる
のか、鑑になるのか検証してみる。
オン・ザ・エッジが設立される前年の95年は、世界的に爆発的な売れ行き
を示したWindows95が発売された年で、わが国でもインターネットが急速に普
及しだした。
またこの時期は、それまでインターネットの利用に懐疑的だった産業界が、
一斉に自社サイトを立ち上げた時期で、HP制作会社の制作能力が企業の
発注量に追いつかない時期でもあった。
オン・ザ・エッジは設立の翌年には有限から株式会社に組織変更し、その後
の3年間は、豊富なHP作成の発注に応えて必死で企業体力の強化に努め
た時期だった。
HP作成のHTMLの知識があると、誰もがHP制作会社を作った時代は20
00年を過ぎると早くも終わりを告げ、直に過当競争の時代が始まる。
IT化の時代は新しい技術が生まれるのも早いが、その技術が IT社会で飽
和状態になるのも早い。しかも、消費者の動向を無視して、同じ技術やシステ
ムに固執していると、直にお客さんに見放させてしまう。
堀江氏は、2000年を過ぎると企業買収に新しい活路を探る。最初に買収し
たのが、01年1月のパイナップルサーバーサービス。レンタルサーバー事業
を行っていた会社で、買収額は実に7億4000万円だった。
その後、04年12月まで25社を買収。証券会社、消費者ローン、ネット広告
代理店、システム開発など、彼の戦略に沿ったグループ形成を行なっており、
プロバイダーのライブドアもその一社である。
インターネット黎明期には体力を蓄えて、単品事業からM&Aを活用して事
業の複合化を図る戦略は、米国が IT成長を遂げていた90年代に広く使われ
た手法で、ある意味 IT事業のテキスト通りの行動だ。
04年6月に近鉄球団の買収に名乗りを上げてからは、今年のニッポン放送
の買収へとマスコミへの露出を一気に増やしていく。
それまで、大人と子供ほどに企業規模が開いていたソフトバンクや楽天との
差が、ほりえもんの名前がマスコミで騒がれる従って急速に縮まった。
起業家は、絶えずアイデアを出すことで事業を仕掛け続けなければ、業容は
すぐに衰退してしまう。
今回の総選挙にあたっては、衆議院解散直後の「衆議院名簿届出予定政
党等事前説明会」の段階で、「ライブドア」の名称で代表者堀江貴文で名簿に
載っているから、事前の準備はしてあった。しかも、出馬表明の前に、民主党
の岡田代表と自民党の小泉総裁に会って会談をしているから、その仕掛けは
半端ではない。
ただ、これまでは米国 IT産業の手法をコピーすることで華々しい活動をして
きたが、これからはナビゲーターのない世界を進むことになる。
米国においても、IT業界から政界へ進出した人はいない。政界から IT業界
に転身した話も聞かない。
多分に、政界と IT業界には、水と油といった風土の違いが感じられる。
ほりえもんは、近鉄買収までは起業家の発想が感じられるが、ニッポン放送の
買収からは投資家に代わっているし、現在は政治家の発想である。
選挙に落選して産業界に戻ったとき、これまで通りのほりえもんとして受け
入れられるか、はなはだ疑問である。