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              『 コンサルティングは契約社会への備え 』

           今年5月、埼玉県富士見市で認知症( 痴呆 )の老姉妹が、住宅りフォーム業
          者19社に約5000万円の契約を結ばされていたことが明らかになり、弱者に
          群がる悪質業者の実態として話題になった。
           わが国のリフォーム市場は約5兆円といわれるが、規模の拡大とともにトラブ
          ルも増加し、業界団体の「住宅リフォーム・紛争処理支援センター」には、1日
          平均で50件の相談が寄せられている。
           住宅リフォームにトラブルが多いのは、@ リフォーム依頼者の住宅建設や契
          約に対する無知からくるもの A 500万円未満の少額な建設工事には許可が
          不要なため、誰もがリフォーム業を開業できる盲点を突いた悪質業者の参入を
          招いている B リフォーム工事に関する情報を依頼者が知る機会は少ないた
          め、業者の言いなりになりやすい、ことがあげられる。
           
           認知症の老姉妹の例は極端なケースとしても、住宅リフォームにおけるトラブ
          ルの原因の多くは、工事前の見積りや工事後の検分を業者自身が行っている
          点にある。
           リフォームと云っても多額の費用を掛けて工事を行う以上、依頼者はしっかり
          とした工事を出来るだけ安い費用で済ませたいし、業者としては出来るだけ経
          費を掛けずに高い料金を取りたい。
           所が、業者は行司と力士を兼ねているのに、相対する依頼者は情報をほとん
          どもたず、契約という名の対戦をさせられることも認識せずに土俵に上がってい
          る状態。一般に、工事を発注して契約書にサインをしたとたんに、依頼者の立
          場は弱くなる。
           この構図は、住宅リフォームだけではなく、金融商品の売買や、新築住宅の
          取得、フランチャイズ・チェーンへの加盟契約などでも、被契約者側が共通して
          感じる立場の弱さである。

           対等な商取引のはずなのに、契約となると被契約者が極端に弱い立場に晒
          されていると感じるのは、契約内容に関して業者側と比べてあまりに情報
         が少なく
しかも契約書自体あまりに業者側に有利に書かれいることに気
         付く
からである。
           これは、わが国の慣行として長いこと放置されている性善説に基づく商取引
          契約を、業者側が一方的に被契約者に押し付けて、問題が生じると契約を立
          てに自分の有利を主張する仕組みによる。

           この不平等を救うのが、被契約者の立場に立った業界の専門家によるコ
         ンサルティングの普及
である。
           住宅リフォームおいても、全国に101万人いる1、2級建築士、木造建築士の
          約1%、1万人の専門家が地域の住宅のコンサルティングを行ったなら、国民
          の安全と安心の住まい造りにどれほど貢献するか知れない。
           フランチャイズチェーンでも、現在多数存在する本部と加盟店の双方をクライ
          アントとするコンサルティングから、加盟店側の立場だけに立ったコンサルティ
          ングが存在することによって、加盟店による無駄な投資がどれだけ救われるか
          知れない。
           米国においての契約社会の成立は、多くの弁護士とコンサルティングの登場
          によって可能になった。
           わが国においても、産業構造の変革と社会の成熟化の進展によって、契約
          社会の到来は避けられないものがある。国は、法科大学院を通じて弁護士の
          大量養成に血眼になっている。
           民間においても、専門コンサルティングの必要性がこれまでになく高まってい
          る。この2、3年、金融向けや対企業向けコンサルティングが急速に増えている
          が、その輪を民間にも広げなくては構造の変革にはならない。

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