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『 この時期、悩ましい有限会社の設立 』
現在、国会では新会社法が上程され、来年4月の施行に向け審議が進んで
いる。
1899年(明治32年)に現行商法が制定されて以降、会社法がこれほど大き
く改正されたことはなく、国際化の流れの中で抜本的な会社法の改革が行わ
れている。
新会社法の最大の目玉は、有限会社法の消滅と最低基本金規制の廃止。
来年5月に法律が施行されると、それ以降は有限会社の新設はできなくなっ
て株式会社に一本化され、既存の有限会社だけがそのままのカタチで残ること
になる。
有限会社300万円、資本会社1000万円の最低資本金規制も新会社法の
施行と同時に廃止され、特例ではなく恒久的に資本金1円の株式会社設立が
可能になる。
新しい株式会社は、定款で株式の譲渡において承認が必要と定める「譲渡
制限会社」と制限のない株式の「公開会社」とに分けられ、取締役、監査役、
会計監査人などで組み合わせる機関設計は、39通りと柔軟な仕組みになって
いる。
転ばぬ先の起業講座が対象とする中小企業の「譲渡制限会社」では、取締
役1人監査役なしの有限会社に近い株式会社の設立が可能になる。また、取
締役任期も最長10年まで延長ができ、社債や新株予約権の発行も出来るよ
うになる。
また、新会社法では、出資する構成者自らの個性を活かして業務執行にあ
たることのできる、新しい類型の合同会社が創設されることにもなっている。
合同会社は、事業を行うためのルール作りを、構成者同士で自由に決めるこ
とができるのが特色で、ソフト関連業種や研究開発型企業、金融、コンサルタ
ント業など人的集約型産業での活用が予想される。
こう見てくると、会社設立には、来年4月以降新会社法に沿った株式会社で
の設立が最良のように思える。
所がここにきて、先細りと思われる有限会社での設立準備が増えている。中
小企業や中堅企業では、現行の有限会社の使い勝手の良さに目をつけて、
子会社として設立して置こうとする動きが目立つ。
現行の有限会社には、決算公告の必要がなく、会計監査の義務付けもない
ところから、会社を維持するためのコストは、株式会社と比較すると格段に安く
つく。
これから会社設立を考えている人にとって、直に有限会社で設立するか、
自営でスタートして来年4月以降に法人成りで株式会社にするか、それとも
来年4月まで準備期間とするか、悩むところである。
現在、株式会社数約114万社に対して、有限会社数は約185万社とその数
も多く、有限会社法がなくなっても10年、20年のスパーンで、日本から無くな
るとも思えない。
起業をじっくり考える、いい機会なのかも知れない。