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『 不足する接客プロを逆手にとって 』
新宿や池袋など都心の繁華街で異色の喫茶店として40年以上営業を続け
てきた談話室 滝沢が、3月31日をもって全店を閉店する。
コーヒー、日本茶、紅茶などメニューはいずれも1000円。コーヒーショップで
はコーヒー一杯180円が常識の現代にあって、価格といい、ゆったりとしたボ
ックススペースといい、にっこり微笑むウェートレスの笑顔といい、滝沢には他
の喫茶店とはまったく違う空気が流れている。
しかも、閉店に追い込まれているはずなのに、現在どの店も常時7〜8割以
上の来店客である。
滝沢の閉店の原因として、良質のウェートレスの確保が困難になったからで
ある。その昔、滝沢のウェートレスは美人の未亡人を集めていると噂された、
品のよい立ち振る舞いと、丁寧な言葉遣いで、来店客をやさしく包み込むよう
な接客をする女性たちが、現在は集まらないのだ。
最近は、接客法というとマクドナルドやコンビニに代表されるマニュアル対応
が一般的である。そこではアルバイトの高校生でも、短時間の研修によって、
しっかりと戦力として店頭に立つことができる。
ただ、この場合の接客は来店客に失礼のない最低限の接客であり、低価格
戦略に呼応したスタイルの接客しか要求されない。
わが国でのスターバックスコーヒーからは読み取れないが、本国の米国では
マクドナルドや既存のコーヒーチェーンに対抗して、店舗の作り方や店員の会
話をアンチマニュアルで押し通すことで誕生したコーヒーショップとして有名であ
る。
街にこれだけ多く低価格を売り物に顧客を増やす店舗が増えてると、それに
対抗するカタチで高価格政略による店舗の登場は、市場化された社会では十
分予想される。実際、海外のブランドショップが商品の品質は別にして、最高の
店舗の雰囲気と接客法で高い利益を上げていることはよく知られている。
− お店評価を決める接客店員 −
わが国では昔から、お店の接客店員には店番の発想しかなく、比較的簡単
な仕事に分類されてきた。それは、店に商品を並べて置きさえすれば売れた
時代、店頭に看板さえ掲げていたらお客がサービスを受けにきた時代の発想
である。
同じような商品・サービスや代替商品・サービスが溢れる今の時代は、接客
店員の力量によって売上げ格差は大きく開く。しかも、インターネットが普及す
る以前ならば、接客態度の悪い店員の店に入った客は、不愉快な思いをして
も運が悪いと諦めるしかなかった。せいぜい、この店には二度と入るまいと固
い誓いを立てるのが、最大の抵抗であった。
所が、インターネットが身近なものになって、お店評価の第一に上げられる
が店員の接客態度である。お店紹介のHPの掲示板には、お店の雰囲気や商
品より先に店員の接客態度が書き込まれるのが常識になっている。
この風潮を逆手にとって、接客のプロを集めたお店作りは、これから開店起
業を目指す人にとって、他店との差別化を図る上で重要なコンセプトになりそう
である。
特に店員とのコミュニケーションを求める高齢者を対象とした店舗では、この
戦略は有効に機能しそうだ。まもなく裕福な中年が定年退職を迎え時間とお
金を持て余してどっと街に溢れる時代が到来する。低価格戦略による開店起
業には見切りをつけて、裕福層に焦点を絞った開店をお勧めする。
また、接客店員のスキルアップが時代の要請ということになると、当然店員
教育のためのセミナーや講師の需要も高まりそうである。
談話室 滝沢は閉店されるが、わが国の接客商売にとって、多くの課題を残
しての閉店になりそうである。