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                  『 財政再建と起業の関係 』

           年の初めにあたって、2005年の起業環境を考えてみたい。
          起業にあたって、市中に多くのカネが流れる好景気の時が起業家には都
          合が良いが、誰もが起業に走るため競争が激しくなり、資金需要も高まる
          ため金利が上昇して、開業してから苦労が多い。反対に、現在のような不
          景気の時は、開業して軌道に乗せるまでが一苦労であるが、商売が回り
          だすと思いのほか上手くいく。
           起業とその時の景気には、商売の繁盛のための強い因果関係がありそ
          うに思われるが、経験的にはまったく関係ない。逆に、不景気時に起業し
          た商売は、風の流れが良くなることはあっても、それ以上悪くなることはな
          いので、開業当初を上手く乗り切ると後は楽である。
           そんな中で今一番関心をもっているのが、わが国財政の巨額債務の問
          題である。日経平均株価が1万1000円台を突き抜けることができなかっ
          たり、長期金利がいつまでも1.0%台であったり、経済成長率は低成長が
          当然のように思われるのは、雪だるま式に膨れ上がって、間もなく1000
          兆円に上ろうとしている国と地方の巨額の債務が足かせとなって、投資家
          の資金が市場に入らなかったり、資金需要が活発化しない要因となってい
          る。

           05年度の国の予算案においても、一般会計82兆1829億円のうち歳入
          の41.8%を国債に依存する異常な状態が相変わらず続くことになる。しか
          も歳出においても、あらゆる項目が削減される中で、社会保障費の2.9%
          と国債費の5.0%だけが増額される事態になった。
           この予算を踏まえて国の借金は602兆円、地方の借金は205兆円。この
          ほかに財政投融資債、政府短期証券などがあり、05年度末の債務残高は
          1061兆9000億円になる。ただ、国の借金に対して、国は金融資産を持っ
          ており、そのうちの流動性のある現預金や証券が230兆円に上るので、借
          金から金融資産を差し引いた純債務は、対GDP比で約70%になる。ただ、
          この債務でも十分異常な水準であり、一刻も早い財政再建が求められてい
          る。

                  − 債務処理の次に起こるのは − 

           財政再建にあたっての手法としては、増税、歳出縮減、インフレ策の3つ
          が考えられる。既に、来年度は増税が目白押しで、その後には消費税の
          増税も噂されている。インフレ策は、デフレの最終局面を迎えている現状
          では考えられない。そこで、歳出削減がこれからの大きな課題になる。
           歳出削減では、90年代にカナダが実行した財政再建策が参考になる。
          カナダは89年にインフレ対策として金融引き締めのための国債利払い費
          の増大、90年からの不景気による歳入の伸び悩みや失業保険給付金の
          増加などにより、財政赤字が420億カナダドル(対GDP比5.9%)の史上
          最高額を記録したため、93年11月に発足したクレティエン政権は、増税に
          頼ることなく歳出縮減による財政再建に真剣に取り組んだ。
           陣頭指揮をしたのが企業経営者から50歳で下院議員になり当時の財務
          相のポール・マーティン氏(現首相)である。
           彼は、歳出の徹底見直しを行った。国民に求められている仕事か、州や
          民間に任せられないか、効率を上げられないか。その上で各省の予算の2
          割削減、政府職員の14%削減、補助金の削減を行い、最後まで増税に頼
          ることなく財政削減によって、96年には190億カナダドル(対GDP比2.4
          %)まで債務残高を減らせている。わが国における財政再建においても、こ
          のカナダの歳出削減の手法を手本にしようとする動きはあるようだ。

           起業を志すものにとって、国の債務が良いとか悪いとか財政論を考えても
          意味がない。必要なことは、現実を直視して次に起こること、次の次に起こ
          ることを予測して、人より先に手を打つことが事業の安全のためにも、利益
          をより増やすためにも肝心である。
           まず、国や自治体との取引は将来細るものと考えたほうがいい。これは、
          直接取引きをする1次取引だけでなく、公官庁をメインの取引先にしている
          企業などの2次取引、3次取引も含まれる。また、公務員を対象にしたビジ
          ネスにも影響は及ぶ。補助金や助成金を頼りに運営されている団体とその
          取引にも影響は及ぶと思われる。
           多分、本格的に国の債務処理が動き出すと、国民生活の風景もガラリと
          変化しているはずである。勝ち組の筆頭に位置していた公務員は、否応な
          しにその位置を追われているだろうし、大企業の中にも収益の柱を失って
          厳しい経営を強いられる会社は多くでる。
           逆に、どんなビジネスが台頭してくるのか、興味深いものがある。

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