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             『 2004年 起業、この一年を振り返って 』

           わが国の企業数は、開業数が廃業数を下回って、長く低迷が続いていた
          が、2004年は活性化に向けての第一歩を印した年として記憶されそうだ。
           今年は、「1円起業」制度を活用しての会社設立が増加しており、今年一
          年間で約1万1千社以上の会社が誕生している。03年2月の制度スタート
          以来「1円起業」は約1万9千社に達しており、起業を志す人間のハートに火
          を点ける制度となった。
           当初、「1円起業」制度は08年まで5年間の時限措置としてスタートしたが、
          起業に対する関心に高さに法制審議会では恒久的な制度として、08年以
          降も制度を存続させる方針を決めた。

           一方、会社組織だけでなく、NPO法人の設立も04年には急増した。
          98年12月のNPO法の施行以来、昨年まで5年間で1万3千弱のNPO法
          人が設立されていたが、今年は一挙に7千以上も設立された。
           欧米では、会社=営利、NPO=非営利の概念がなく、明治以来のわが国
          の官僚思想が作り上げた会社=営利企業の発想は、NPO法人の増加とそ
          の事業拡大によって改める時を迎えている。NPOにおいても、公共性や社
          会性の高い事業を行うとして、一定の安定した利益を上げないことには、組
           織を存続させることができない。
           
                  − 実際の起業に突き進んだ一年 − 

           今年のもう一つの特徴として、元気な女性起業家が目立ったことがある。
          20代30代の女性を対象としたマーケティング会社「トレンダーズ」の経営の
          かたわら、女性起業塾を運営する経沢香保子さん、女性向けに金融やキャ
          リア開発のコンサルティング会社「マネー・リテラシー研究所」の経営と「女の
          たしなみ やわキャリ塾」を主宰する渋井真帆さんなど多くの女性起業家が、
          国民の半数である女性を対象に、インターネットとネットワークのWネットを
          武器に存在を広くアピールした。
           彼女たちに共通しているのは、自前の事業と平行して女性起業家育成の
          ための教育組織を運営している点で、これは、世界のトヨタが車の販売と同
          時にトヨタ式生産方式のノウハウを世界の企業向けに売り込んで、トヨタファ
          ン作りで成功した図式と似ていて興味深い。

           昨年は、サラリーマンの収入減から「週末起業」が大変な人気になり、多く
          の人を起業へと関心を向けさせた。今年は、関心から実際に起業へ突き進
          む人が次第に増える段階に入っている。
           しかも、年金問題に見られるように、幾つになったらどのくらいの価値の年
          金額をもらえるのか皆目見当のつかない時代になった。また、企業の雇用
          に対する考え方も、能力主義や成果主義などの名の下、従業員の使い捨て
          思想が充満するようになった。
           サラリーマンの自己防衛策としての起業が、各地で芽吹いた一年であった。  

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