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            『 増え続けるフランチャイズ店の裏で 』


          大手銀行間では、関連銀行の譲渡契約を巡って裁判所を舞台に大きな問題
         になっているが、起業においても契約トラブルは無縁ではない。
          フランチャイズ・チェーン(FC)における本部と加盟店とのトラブルは、その代表
         的な例である。
          FCの本場米国では、自動車やガソリンの販売店から教育、住宅、食品・健康
         など、75業類に渡って店名使用と営業ノウハウの移転が可能なビジネスをFC
         としており、加盟店には営業店が数10店舗、年間売上げ1億ドルを超える会社
         も少なくない。
          他方わが国のFCは、真っ先にコンビニエンスストアが挙げられるように、197
         4年にセブンイレブンがコンビニをスタートさせて以来、弁当屋、クリーニング、学
         習塾、パン屋、ケーキ屋、居酒屋など主に個人事業主を対象にして加盟店を広
         げてきた。

          わが国においてフランチャイズ契約の裁判係争が多発したのは、コンビニが社
         会に定着し始めた70年代後半から80年代前半にかけての時期である。この頃
         は、米国の契約社会方式がそのまま導入されたため、それまでわが国に長く根
         ざしていた商慣行とまともにぶつかっての裁判紛争が多発した。
          現在は、フランチャイズ契約に関する裁判所の判例も多くなり、一応安定した
         状態といわれる。それでも、FC業界は過当競争を繰り広げており、一方には、フ
         ランチャイズに値しない詐欺まがいの悪質業者の横行も続いている。
          昔ながらの、圧倒的な資本力と情報力をもつFC本部に対し、素手の加盟店が
         生き残りのために戦わなければならないのは、近隣のライバル店なのか本部な
         のか、周辺状況も読めないまま立ち向かう構図は今も昔も変わっていない。

                 − 裁判を通して見えてくる問題点 − 

          トラブルの原因で最も多いのが売上予測である。チェーン店を始めるあたって、
         フランチャイズ本部も加盟する側も、さばき切れない来店客をどう処理するか楽し
         い夢を見たがるものである。しかし現実は、予想を大幅に下回る売上げで、事業
         計画がスタートから行き詰るケースも少なくない。 
          そこで、両者の責任のなすり合いが行われ、裁判にまで進展してしまう。契約
         の解約に際しても、違約金や事業の継続営業権、設備の使用権など最初に締
         結した契約書の文面が改めて出てきて加盟店側を悩ませ、赤字でも閉めるに閉
         めれない店舗も多い。
          契約書は基本的に、本部が専門家を交えて自分に都合よく作成されているの
         で、起業側には不利な内容と認識しておくべきである。
          現在、減少を続ける小売店舗の中にあって、5店に1店をFC店が占めるまでに
         増えている。ただ、約100年の歴史を持つ米国では、本部による安易な売上予
         測を禁じるなど、弱い立場の加盟店側への法的保護が図られているのに対し、
         わが国では、開店に際して本部の説明不足、高いロイヤリティー、前近代的な
         取引慣行など多くの問題が積み残しになっている。

          これからFCによる出店を考える場合、まず起業する本人がチェーンの既存店の
         現状を知ることである。店長や店員から話を聞き、ついでにお客さんにも感想を
         聞いて感触をつかむ。次いで、出店予定地における市場マーケティングを行うこ
         とを勧める。
          その上で集めたデータを基に、FCコンサルタントや出店経験者のノウハウを活
         用すること。
          ただ、FCコンサルタントの中には、本部側と加盟店側と双方のコンサルタントを
         しているところも多いが、加盟店の弱い立場を守ろうするなら、加盟店専門のコ
         ンサルタントに相談することが大切である。
          その後の本部の説明に際しては、曖昧な事柄を残さないで公式にちゃんと説
         明してもらうことも重要である。
          FCは、手っ取り早く店名ブランドと営業ノウハウを手に入れることのできる素晴
         らしい経営手法である。しかし、その入手には、数百万円から一千万円以上の
         資金と、ビジネスのリスクが常について回る。
          契約書の内容を十分理解して、契約によってこうむる自分の不利益とFCに加
         盟して得ることのできる利益とを客観的に比較した上で、自分にとって有利と判
         断してから契約する慎重さが求められる。


          フランチャイズによる起業をお考えの方は、
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