東日本大震災がきっかけとなり、岩手県出身のSさん(62)が東京西部で喫茶店を開業したのは5年前。定年後は郷里に戻ることも考えましたが、このままビジネスから身を引くよりは、もう一度仕事がしたい気持ちが強かったようです。
起業にあたってはあれこれ事業の候補を考えた結果、これからは中高年を相手にしたビジネスで健康志向の強いもの。それと初期投資も借金をしない範囲で、開業のできる事業ということで喫茶店を決めたと言います。
兆度、コーヒーを飲むことによって老化を防ぐとか、ダイエット効果がある、脳の活性化など、広く研究結果が公になっていた時期です。喫茶店を開業して、中高年のたまり場となる程度のお客さんは集められると考えました。
ただ、この5年間でコーヒー市場の環境は大きく変わりました。以前から、ドトールコーヒーなどの低価格帯ショップと、スターバックスのような高価格帯のショップとは分かれていました。
ところが、郊外型のコメダ珈琲店や星乃珈琲など大型店舗が、廃業した会社やサービス店跡地に次々とできてきます。コンビニもコーヒーを出すようになって、Sさんの喫茶店はいよいよ継続が厳しくなりました。
Sさんの予測は外れていませんが、一つ抜けていたのは現在ゼロ金利が続いていることで、少しでも商機のあるビジネスには投資する会社が多いことです。個人が考えるビジネスとは違う規模で出店を考える企業が多くあります。
もう一つ計算違いだったのは、珈琲店を閉店するとその後に、資金も仕事も残らないことです。まだ若いですから、これからの夫婦の生活を考えるとすっかり滅入ると話しています。
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