云うまでもないが、起業を考える人にとって、これからの世の中の流れをある程度正確に、予測出来るかどうかが、事業の成否には大きな影響を与える。
起業がある種の賭けとするなら、起業家が行なう将来予測は最も大切な勝敗の分かれ目となる。そこで、近々起業を考えている人に、重要なポイントとなるのが、インフレへの対応である。
インフレとは、物価が上昇することであり、それに反比例して貨幣価値が下降して金利が上昇することを意味する。
物価上昇の要因としては、中国やインドなどの経済成長に伴って、資源や生産財の需要拡大により価格上昇が起こる。現在の原油価格の上昇がこれにあたり、ほかに鉄やアルミ、金など、あらゆる鉱物、生産材も上がっている。
また、国内の景気拡大に伴い、ソフトバンクの携帯事業への参入で巨額の買収資金を必要としたり、東芝、日本板硝子、セブン&アイなどの巨額投資に見られるように、企業の資金需要が旺盛になることで、市場金利が急激に上げに転じる。
ただ現実のインフレは教科書の世界だけで、実際にインフレ経済を肌で感じれるほどに経験した人は少数になっている。
公定歩合は、90年8月の6.0%を頂点に下げ続け、現在の0.1%まで約16年間に渡って下げ一色。会社勤めをしても、経済のメカニズムが理解できるのは30歳を過ぎるころだから、現在は45歳以上の人でなければインフレを経験していないことになる。
長いこと、物価上昇に直面していないと、少しくらいの価格上昇は好景気にとって必要要件などと思いがちだが、実際にインフレが激しくなると誰も価格のコントロールは出来なくなり、経済は痛めつけられる。
そこで、これから起業を考える人にとっては、このインフレを敵にするか、味方にするかで、事業展開は大きく変わってくる。
@ 当然のことながら、ある程度以上の利幅が期待できない商売は、存続が難しくなる。よく、儲からなくても、トントンでやっていけたらと言う人がいるが、仕入値も金利も上昇しているので、トントンの商売では成り立たない。
A インフレになると、現在の低金利に支えられているような企業は淘汰される運命にある。企業倒産が大幅に増えるため、そこのお客さんを取り込むことを目的にした起業は有望だ。現在、淘汰されそうな会社で働いている人は、早く見切りをつけないと痛い目にあう。
B これまで、街に溢れていた商品がインフレと共に少なくなるため、製造業が俄然元気になる。特に、最近は海外への進出企業が増えているので、国内製造業は商品の調達が確実な点からも有利に作用する。製造業やその周辺での起業はねらい目となる。
わが国の景気の拡大と共に、これまで溜まっていたマグマが一気に噴出するように、物価上昇の圧力が破裂して、インフレがわが国で荒れ狂う可能性は非常に高い。
そのため、インフレへの準備が早いか、遅いかによって、起業だけでなく、皆さんの人生にも大きな影響を与える。無謀な借金をしないとか、金利は変動制から固定性への切り替えなど、まず自分の身の回りを振り返って、インフレ対策を考えてみては如何だろう?
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