安倍首相が主張していた、日銀による大幅の金融緩和が実行され、対ドルの円相場は98円から99円と就任以来円安が続いています。この円安によって、輸出企業の業績好転が期待され、日経平均株価も1万3千円台と大幅に上昇しました。安倍首相としては、当初の目論見通りで万々歳でしょうが、このままでは終わらないのが経済です。
円安を強く望んでいたのは大手輸出企業です。反対に、海外からの輸入品を扱う企業は、価格上昇で苦しんでいます。既に、農産品、原油、素材、食料品などは、1割以上の値上げです。お客さん向け価格への転嫁が難しい業種も多い、中小企業は逃げ場のない収益源に陥っています。経済の場合、一方にとってプラスは他方のマイナスです。
デフレからの脱出のため、安倍首相が直々に経団連に出向いて、従業員の給与引き上げを依頼しました。国内需要が拡大しないことには、デフレ脱出はムリです。現状では、従業員の給与を上げ、消費を増やすことで需要を拡大することが効果的な方法です。しかし今の流れは、円安による材料費高騰のため、企業は給与を引き下げる動きに出そうです。
経済学の視点からしますと、デフレ脱出のためには、円安は欠かせない戦略です。ただ、円安が続いている間に、国内需要をどれだけ高められるかにかかっています。自ら三本の矢と称するデフレ脱出戦略の2本目までは、何とかカタチができました。そこで、経済改革、成長戦略と言う3本目の戦略を導入するときがきています。
6月までには、具体的な成長戦略を出すと言っています。現在は、産業競争力会議において、経済成長の柱となるビジネスをもんでいる最中です。この成長戦略となりますと、歴代の日本の内閣が喫緊の課題をしながら、小泉内閣においても、前回の安倍内閣においても、麻生内閣においてもできなかったことです。
今後の展開を考えますと、円安によって日銀が画策する消費者物価2%はクリアしそうな気配です。逆に、急激なインフレが心配されます。また、長期金利の上昇は、否応なく進みます。現在は、0.6%程度ですが、今後金利も急激に上昇しますと、今度は赤字国債の発行規模からして、財政問題が急浮上すると思われます。日銀による金融の異次元緩和が、とんでもない事態を招かないことを祈るだけです。
起業にとってインフレは、追い風といわれます。デフレのときは、借金して作った初期投資額を回収するのに、将来の収益が少なくなりますから、厳しいからです。反対にインフレでは、投資額以上に収益が膨らみますから、好循環になります。しかも、従業員の収入と違って、起業家の場合はインフレの波に乗ることができます。あくまでも、ビジネスが軌道に載ればの話ですが。
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