ビジネスにおいては、信じられるのは自分だけと思っていて間違いありません。何事も、自分で現地に出向き、取引先の人と直接会い、現場の空気を読み取り、直接お客さんの声を聞かないことにはモノゴトは始まりません。これは、起業においてもまったく同じです。
わたしには、6年前の後味の悪い思い出があります。起業相談をメールだけで始めて間もないころです。若い男性からフランチャイズでの開業で相談を受けました。そのやり取りの後に、いきなり中古本とCDのリサイクル店を開業しますとメールがありました。
彼は情報システム会社にSEとして働いて、準備期間をおかずフランチャイズ本部の担当者に開業準備を任せ、いきなり開業すると云うメールでした。いくら何でもこれは乱暴過ぎます。ただ当時のわたしは、このようなクライアントを止めさせる術を知りませんでした。
起業にあたっては、気持ちの切り替え期間が必要です。これまで会社従業員だった人が、いきなり経営者として仕事をするのは無理です。また準備期間中には、あれこれ小さな失敗をすることも大切な通過儀礼です。失敗は、大きな成功のきっかけになることもあります。
彼は既に加盟金を本部に支払っていたこともあり、そのまま突っ走ってしまいました。それから7ヵ月後に、「借金をする前に閉店します」とお礼を添えたメールがきて、連絡が取れなくなりました。唯一の救いは、彼が若いことです。この失敗を、次に生かしてもらいたいものです。
若いと、まだまだやり直しが利きます。これに似た、相当乱暴な起業をする人は今もなくなっていません。事前のマーケティングをしないで開業したり、取引先との契約書をしっかり読まないでサインをしたり、危なっかしい起業は後を絶ちません。
現在のわたしは、山登りと同じであたりの気配がおかしい時は、起業から引き返す勇気を伝えています。事前の十分な準備に勝る、起業の成功法はありません。初めて会社勤めをしたときを思い出してください。自分で起業したときは、あのどきどきした状態と同じです。そこでいきなり利益を上げることなど、考えられないはずです。
|