コンビニエンスストアが元気です。
2008年の売上げは20兆円を超え、百貨店の売上げを約5千億円抜いて初めて逆転しました。コンビニ全店では前年比、6.7%の増加を記録しています。
最近は、他の小売業種の売上げ不振が深刻なだけに、コンビニの好調さが際立っています。この背景にあるのは、08年4月からスタートしたタバコ自動販売機の成人識別カード「タスポ」の導入です。
未成年者の喫煙を防ぐため、自販機での購入に際しては「タスポ」での識別が必要ですが、多くの喫煙者からは嫌われたようです。ほとんどの人が、コンビニでの購入に切り替えてしまいました。
コンビニ本部もこの機会にお客さんを増やそうと、価格の安いプライベート(PB)商品の投入を増やし、主婦や高齢者の需要に応えています。ローソンでは、生鮮品を扱う「ローソンストア100」に力を入れていますし、ファミリーマートでも、「ファミマフレッシュ」で生鮮食品を重点的に扱っています。
このような好調な背景もありまして、最大手のセブンイレブンでは、10年2月期までの1年間に、1千店の加盟店を増やす計画を発表しました。
セブンイレブンの大量出店計画は、グループのセブン&アイ・ホールディングスでスーパーのイトーヨーカ堂も百貨店のミレニアムも、ファミレスのデニーズも業績が悪化していて、たまたま、タスポ景気で急にセブンイレブンの業績が良くなったところから、政策的に大量出店を決めたところがあります。
「タスポ」景気が起こるまでのコンビニは、8年連続で既存店の売上げはマイナス続きでした。加盟店は、出店した1年目の売上げが最高で、その後は年々売上げが下がることを意味してます。
決算上本部が毎年売上増を記録しているのは、新規の加盟店の売上げがプラスされているからで、既存店だけの数字ではとっくに売上げ減少になっています。
そのコンビニ店は、全国の既に4万3千店になっています。セブンイレブンの育ての親で、セブン&アイの鈴木敏文会長でさえ昨年までは「既存店の伸びは期待できない」と云っているほどです。
セブンイレブンの加盟店の場合、92年には加盟店の一日の平均売上げが68万円だったものが、08年は60万円まで減少しています。
ここにきて、コンビニ本部各社の加盟店オーナー募集に力が入っています。この売上げ上昇の波に乗って、1店でも多くの加盟店を増やそうと必死の募集活動を展開しています。
果たして、本当にコンビニ加盟店として事業を始めて勝機はあるのでしょうか。まず問題は、既に出店している4万3千店の店舗です。
百貨店もスーパーも店舗数に比較して、商圏人口が少なくなったことで業績が悪化しています。一言でいうなら、オーバーストアの状態に入っています。日本の人口は減少が始まっているのに、百貨店やスーパーの店舗数が多すぎるのです。
この現象は、コンビニについても同様のことが云えます。現在、4万3千店のコンビニ店では、商圏人口は3千人を切っています。ここでもやはり、オーバーストア現象は始まっています。
コンビニ店舗は、そのほとんどがフランチャイズチェーンによって運営されています。本部が直接投資する直営店を除きますと、出店のリスクは加盟店が被りますから、出店にあたっては慎重の上にも慎重に行なうことが大切です。
しかも、コンビニの契約期間は10年を越す長期に渡るものです。最近は、初期投資資本を契約期間中に回収できないケースも多発しています。あるコンビニ本部では、契約期間が終了すると本部から一方的に契約切れを言い渡されて、その後の生活が困難になる加盟店オーナーもいます。
目先のコンビニ店は確かに好調です。現在の大不況の中では際立っています。しかし、5年後、10年後にコンビニはどうなっているのか、開業する以上この問題に目をつぶるわけにはいきません。
フランチャイズで開業を目指す人は、是非一度読んでください。
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