遂に米国発の金融バブルが弾けました。
リーマン・ブラザーズの経営破たん以降、マスコミに出てくる金額はほとんどが、円換算で兆の単位になるので実感が乏しいのですが、リーマンは負債総額約64兆円抱えての倒産でした。
リーマンは証券会社と投資銀行の2つの顔を持っていて、一般的に知られる株式会社の証券や債券発行の引受業務のほかに、M&Aや投資顧問、金融エクイティ、投資運用など、広い窓口で資金の提供を行なっています。
わが国でも、ホリエモンのライブドアがニッポン放送株の買占めに走ったとき、資金の提供元として名前が知られるようになりました。
ライブドアのように、企業が新たな投資で資金を必要としたとき、リーマンは銀行や年金基金、財団、企業などから、1口10億円単位で集めた資金を使って、企業の投資支援を行なうことで多額の利ざやを得てきました。
特に、不動産投資によるビル開発や住宅ローン、資源開発などでは、複数の投資先を証券化することでデリバティブ商品にして、投資信託のカタチで一般向けにも販売されています。
ただ、金融工学を駆使して間違いのないはずのこの手法も、米国の低所得者向けのサブプライムローンが発端になって、破たんに突き進むことになります。
一説には、米国は人口が増え続けるので住宅需要が停滞することはあっても、下がることはないと予測していて、実際には下がったために逆回転したと言われます。
また、米国の住宅バブルの崩壊を、リーマンの社員たちも当然予測していましたが、そこで投資を止めることは社員たちが自分の仕事を失うことを意味しているので、自分の生活のために最後まで突っ走しってしまったと言う説もあります。
わが国のバブルのときも、そろそろ危険水域に近いことを予測する人は少なからずいましたが、強気を売り物に出世した会社役員や幹部は、自分の立場を守るためにも、引くに引けない状態に自分を追い込んでしまっていたようです。
このようにしてリーマンは、米国の住宅のみならず、グローバル化波にのって世界のほとんどの事業リスクには首を突っ込んで、それを管理することによって利益を上げるビジネスを行なってきました。
そのビジネスに限界が見えてきたのは、地球上を席巻したマンモスと同じように、リーマンの事業自体が大きくなりすぎたのです。負債総額の64兆円といいますと、フランス、イタリアなど先進国の国家予算とほぼ同じ金額です。
結局はマンモス同様に、大きくなりすぎて自壊していく過程を辿ったのが、今回の米国発の金融危機の真相です。
この米国スタイルの「金に金を稼がせる」型ビジネスの崩壊は、起業のおいても大きな影響を与えそうです。まず、わが国でも根強い人気のあるロバート・キヨサキさんの「金持ち父さん」は、その投資先が不動産投資で今回の金融危機ではモロに資産を失ったと思われます。
証券取引のデートレーダーの人たち、個人の投資家なども、乱高下の激しい株の動きに資産を相当目減りさせています。また、FX(外国為替証拠金取引)を行なっていた人の多もが、連日の激しい為替変動によって証拠金が底をついて、取引から退場しています。
これまで、マネーゲームと呼ばれる市場でのプレーヤーの多くが、リーマンとともに姿を消しています。当然、外資系金融機関で働いていた人たちも、新たな職場を探していますが、これまで同様の金融の世界に残れるのは限られています。
日米ともに、金融業界が生んでいた若い富裕層は相当少なくなります。都心の億ションの住み手が減ることは避けられません。
多分、米国政府とFRB(連邦制度準備理事会)は、今回の金融危機に伴って100兆円を超える資金を市場に投入していますから、大量の逮捕者と金融の制度変更を行ないます。
これから長い期間、マネーゲームと呼ばれる資金作りは出来なくなるでしょう。当然、わが国においても金融に対しては規制が広がると思われます。個人向けの金融ビジネスを除くと、しばらくは投資顧問のようなビジネスは息を潜めると思われます。
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