過去の調査結果を見ても、起業にあたっての最大のハードルは開業資金の調達問題とされています。個人なりグループが、数百万円〜数千万円の資金を集めるには、大変な努力と時間が掛かります。
特に起業に際しては、都市銀行や地方銀行からの融資はほとんど可能性がなく、大多数の人は信用金庫や国民生活金融公庫(国金)で相談にのってもらうことになります。
その国金ですが、先ごろ公表された平成19年度の融資額と融資件数は、前年比で大幅に増加しました。
まず、起業向けの融資ですが、現在利用されているのは13年7月に創設された「新創業融資制度」です。融資対象となるのは、新規開業、女性・若者/シニア起業家、再チャレンジ支援などで起業する人で、新たに事業を始めるか、事業開始後の税務申告を2期終えていない人。その上、開業に予定している資金の3分の1以上を自己資金として確認できることが必要です。
融資限度額が1千万円ですので、自己資金5百万円を用意しますと、国金から1千万円借りて1千5百万円の開業資金を用意できることになります。金利は、年3.45%。この場合、担保と保証人が必要ですが、無担保、無保証人ですと、金利は年4.65%になります。 返済期間は、7年で最初の6ヶ月が猶予期間です。
この制度がスタートして8年目になりますが、統計が公表された19年度は利用件数が14108件で、前年比で比べますと17年度の+18.8%、18年度の+22.6%と比較して、19年度は+52.7%と大幅に融資利用者が増えています。
金額ベースではもっと顕著で、17年度の+19.0%、18年度の+16.1%が、19年度は69.4%も増え、485億円が遣われています。
この傾向は、今年度に入っても衰えていなくて、600億円を突破すると予想されています。ここ10年以上、企業の開業率は廃業率を下回る傾向が続いてきましたが、やっと歯止めがかかりそうな状況はこの数字を見ても分ります。
ただ、国金の起業向け融資が増えているからと言って、起業を目指す人誰にでも資金を貸すかというと、そこはまた別の問題が待ち構えています。
国金の融資に対しては、国のお金を使うということで厳格な審査があります。通常は、近くの国金支店へ行って手続きなどの説明を聞いて、そのときに借入申込書、開業計画書などの書類をもらってきます。
その上で、各書類に記入して再度支店を訪問することになります。国民生活金融公庫のホームページ上からも、これらの手続きは可能になっています。
ただ、他の書類と違いまして資金融資の書類ですので、事前に経験者や専門家に相談した上で提出する方がよいと思います。
国金の融資担当者はみなさん専門家ですから、事業計画を見る目は確かで、その上厳しいものです。彼らは、資金を貸すのが仕事ですから貸したいのですが、同時に返済ができないような事業計画には絶対貸してくれません。彼ら個人の評価にもつながります。
その意味で、開業資金の融資を受けるに際しては、事前のマネジメントの能力アップやマーケティングスキルの向上など、起業にとって欠かすことの出来ないスキルです。日頃から起業に向けての総合力を付けて、その上で国金へ出向いてはいかがでしょうか。
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