今年の食品販売業界は、1月に発生した不二家の製造期限切れチョコレート販売騒ぎがはじまり、10月になって赤福の偽装表示事件で最高潮に達した感があります。
不二家はケーキの全国ブランドですし、赤福は土産物の売上高第一位ですから、わが国の洋和菓子を代表するメーカーの不正行為が公になったわけです。
ここで感じますのは、企業の寿命説です。一昔前までは、企業の寿命は50年と云われてきました。これは企業が設立されて、成長期を経て成熟期、その後は衰退期までの期間が大体50年とされます。経営者でいいますと、2代目から3代目の時代には、企業がその役割を終えるというものです。
所がわが国では、既存の大手企業の販売シェアを奪おうとするチャレンジ精神のある起業家がいなかったり、既存の大手企業の利益を保護しようとする仕組みができていることから、最近は企業の寿命が人間の寿命同様に長くなっているようです。
不二家は設立から69年、赤福に至っては丁度今年が300年。早い話が、企業の寿命は当の昔に終わっている両社です。
多分、赤福がここまで生き延びてきた背景には、今回のような不正行為を長い歴史の中で延々と続けてきました。だからこそ、300年もの長い間企業の寿命を引き伸ばしてきたと云えます。
ただ、認識しておかないといけないのは、今回のような製造日付の改ざんが不正行為とされるのは、ここ10から20年のことで、それまでは味が落ちたり、食中毒で騒ぎでも起こさないかぎり、このような行為が長いことまったく問題にされないできたのも事実です。
時代の変化とは、このような事実の積み重ねです。これまではまったく問題とされないできたことが、少しずつ世の中が変化して、赤福の経営者が気付いたときは大変な犯罪行為をしてきたことになります。
当然のことですが、不二家にしろ、ミートホープにしろ、「白い恋人」の石屋製菓にしろ、不正行為をしている企業は相当な利益を上げています。逆に、新たに起業した会社は、製造日付や賞味期限に関して注意を払っていますし、商品名も知れていませんから利益も上がりません。
残念ながら、赤福が営業を中止して以降、赤福に代わるお伊勢土産は聞きません。札幌の百貨店や新千歳空港の土産売り場では、「白い恋人」に代わるお菓子のお土産が売られています。
不二家の問題が広く知られるようになって以降、街の小さな手作りケーキ屋さんでは来店客が増えているとも云われます。
これは、洋和菓子業界に限った話ではなく、日本のあらゆる業界に言えることですが、既に寿命の過ぎた企業が多く存在していて、昔ながらの違法行為すれすれの事業展開を繰り返して利益を上げています。一方には、既存企業の大きな壁を前に、起業することさえ諦めている人も大勢います。
これまで、わが国が大きな変化を遂げた明治維新から太平洋戦争終戦までには、77年かかっています。そして、戦争終戦から現在までが62年です。
多分、赤福の不正行為は象徴的な出来事でしょうが、これから10年でわが国はますます変わると思います。
起業を考える上では大変な分岐点となりそうな、大きな変化がこれからますます起こりそうです。赤福の隣に、「安全と安心の青福」が誕生するような。
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