8月下旬に、「司法研修生のうち100人以上が就職先が決まらない可能性がある」というニュースが、マスコミで大々的に取り上げられました。
弁護士、裁判官、検事などに就職する、わが国で最も安定した職業とされた司法関係の入口にいる研修生に、就職先が見つからないのです。
司法試験に受かった研修生は、新司法制度で1年、旧制度で1年4ヶ月の研修をした後に就職します。90年までは約500人の研修生でしたが、06年までは約1500人、07年からは約2500人で、10年以降になると約3000人の研修生が就職を目指します。
これまでは、弁護士に仕事を依頼するとなると、知人の紹介が必要で一見の依頼人の弁護は引き受けないなど、大名商売がまかり通っていましたが、これからは米国並みに弁護士が依頼人を探す時代になりそうです。
そして、これは単に弁護士の増加にとどまりません。既に知っている人も多いと思いますが、司法書士、行政書士、弁理士、税理士、社会保険労務士が行なっている業務は、すべて弁護士資格があるとできます。
ヨーロッパや米国では、法律に則った仕事はすべて弁護士の仕事であって、司法書士以下の資格はありません。わが国も規制緩和の中で、本来の司法業務の姿に変えていかざるを得なくなったと思います。
そこで、将来は社会に弁護士が溢れるなかで、士族と言われる職業の人たちの玉突き現象が起こりそうです。依頼の少ない弁護士が、司法書士の領域の仕事に手をつけはじめ、司法書士は行政書士の領域に入り込むといった具合です。
一方で、士族とされる人たちへの依頼件数は確実に減少してます。一つは、わが国の開業数の減少です。会社を立ち上げる人が少なくなっていますから、依頼件数も減っています。
また、コンピュータソフトの開発が進んで、簡単な書類などは士族の人に依頼することなく、自分で作成することができます。
弁護士も含めて士族とされる人たちに、旧来型の依頼は減少すると思われます。
ただ、これらの現実をまったく知らないで、90年代までの安定した職業の士族を夢見て、資格試験に臨んでいる人が大半です。
もしこれから資格を取得して起業を目指すならば、自分なりに得意のジャンルを絞り込んだ起業を目指すか、外国企業をターゲットとする起業を目指すか、複数数の資格を取得して他の人との差別化を図るか、それとも弁護士資格を目指すか、公認会計士を目指すなど、取得前から戦略を考えておく必要がありそうです。
既に、行政書士が興信所などからお金をもらって、人の戸籍抄本を無断で取り寄せるなどして罰せられる事件が各地で起こっています。
これまで恵まれてきた士族の人たちも、規制緩和によって厳しい時代を迎えそうです。ただ、士族の仕事がなくなるわけではないのですから、事前にしっかり考えて行動することです。
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