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『いよいよ追い詰められた近未来通信』

平成18年11月14日

 IP電話を活用したベンチャー企業、朝日、読売といった大手新聞に派手なカラー広告を掲載して有名になり、今年8月には国税庁から税金の申告漏れを指摘された「近未来通信」が、今度はIP電話の総元締めである総務省から、電気通信事業法に基づいて契約者数や利用状況など、経営実態の報告を求められていることが報道され、いよいよ窮地に追い込まれている。


 わたし自身近未来通信に関しては、90年代の後半にわが国にもパソコンを利用した、IP電話技術を商業化する企業の1社程度の認識しかなかったが、一昨年からこのサイトで行なっている起業相談のなかに、「近未来通信で募集している、中継局オーナーによる起業は大丈夫だろうか?」という内容の質問がくるようになり、近未来の事業内容を調査したのが係わりのきっかけだった。


 調査の当初は、IP電話用の中継局で使用するサーバーの8回線分を投資家に1千1百万円以上の金額で投資させ、回線の使用量に応じて配当を支払うシステムがよく理解できなかった。サーバー自体は、既にその時点で百万円を割る通信機器だし、通信会社なら数万単位の通信回線を開通させているはずなのに、8回線で通信量をカウントする非効率の方が費用がかかるからだ。


 しかも、読売、朝日といった大手の新聞に広告を載せて中継局オーナーを募る手法は、イカサマ師が自分の行為を正当に見せるため、新聞社の権威を利用する心理学でいうミラー効果の一種だ。近未来が中継局オーナーや起業という言葉にこだわったのは、単純な資金投資ならば金融庁の管轄となって、厳格な資金管理のもとに置かれることになるが、第2種電気通信業者ならば登録も簡単なうえに、オーナーの投資に対してまったく監視機関がないからである。


 また、資金運用実績もないのに高金利を売り物に資金集めをして、最初は高金利を支払って最後は行き詰ってしまう取り込み詐欺などとは違って、近未来はそれなりに事業実績があるところが話しをややっこしくしている。インチキ話で集めた資金があるから、テレホンカードと同様の機能をもつグローバルカードや、IPテレビ電話サービスなど、実際に資金投入して市場にも出回っているうえ、9年間も事業を継続させてきているために、誰もが近未来の事業に半信半疑だった。


 そのため、近未来の事業はおかしいという声が長い間、2ちゃんの掲示板などで言われる程度で、国税庁の調査の手が入るまでは、中継局オーナーの募集など誰止めることなく行なわれていた。わたしのところには、起業相談が多く寄せられるようになって、このトピックのなかで「近未来通信に未来はあるか?」と警告のページを載せた経緯がある。起業相談にきた人の多くは、高齢者が占めている。ゼロ金利が続くなか、預金生活をしている人にとっては、近未来の高配当には心が引き寄せられたようだ。特に、IP電話とかベンチャー企業の言葉には魅力があったようだ。わたしも、事業をしている会社の営業妨害をするわけにもいかず、「この投資をした人のほとんどは、不安で寝れない毎日を過ごしているようだ」と話すことで納得してもらった。


 近未来同様に、危ないフランチャイズも少数だが存在する。近未来のように、「パソコン・通信の知識や営業活動などは全く必要ありません。黙っていて儲かります」といった類の台詞は、イカサマ師が使う常套句である。はっきり云って、起業にあたっては、経営の伴わない起業はありえない。起業家は、人を見る目、事業を見る目、お金を見る目を日頃から鍛えることでイカサマから逃れることだ。


関連トピックス
平成18年11月22日 「近未来通信で騙された人、騙されなかった人」
平成18年11月14日 「いよいよ追い詰められた近未来通信 」
平成18年8月30日 「近未来通信が追徴課税で絶命の窮地に」
平成18年4月18日 「起業から見た近未来通信のビジネスモデル」
平成17年10月25日 「近未来通信に未来はあるのか」


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