このサイトでも何度か取り上げてきたIP電話の近未来通信が、国税局の査察調査を受け、05年7月までの1年間に約6億5千万円の申告漏れで、追徴税額は重加算税を含めると、約2億5千万円に上る修正申告に応じたようだ。
近未来通信の問題とされる事業は、IP電話用の通信回線に起業家が1千万円を越す資金を投資し、回線利用者が支払う料金を近未来通信と起業家とが折半で取り合うシステム。
ただ、この事業内容については、近未来通信が売上げ約245億円(06年度)以外の財務諸表をまったく公表していなかったり、資本金がたった6千万円しかなく過小資本どころではない現状では、インチキ臭さがついて回っていた。
その上、IP電話のベンチャー企業が近未来通信のキャッチフレーズだったが、設立当初の1997年とは通信環境が大きく変わってしまい、IP電話の利用者が1千万件を超え、もはやベンチャービジネスの域から大手通信会社のビッグビジネスの域に拡大してしまっている。まったく利用者向けの広告も行なわずに、IP電話会社が存在すること自体が不
思議なことだったのだ。
何故、ここまで胡散臭いこの会社に行政の指導や司法の手が入らなかったかというと、金融商品に対する投資なら金融庁の管轄だし、通信ということなら総務省の管轄ということになるが、通信事業に投資という管轄の交差が行なわれ、そのうえ投資を起業と云うカタチに置き換えることで、法律の目をすり抜けていたらしい。
今回の国税庁の査察調査は、72年に行なわれた悪評高いねずみ講の天下一家の会が摘発されたときと同じで、脱税容疑によって内部の財務調査をすることにより、会社の事業実態がすべて把握されることになった。近未来通信については、全国紙に一面広告を連続して掲載しはじめた2002年あたりから、その業務内容に不信感が付きまとい、煙が燻り続けていた。申告漏れを指摘されたことによって、追徴金に応じると何故そんなに金がるのか問題になり、応じないと資金繰りの苦しい会社と噂され、どちらにしても新規の起業家集めに大きな影響を及ぼすことで、会社の存続には大きな影響を与えることになった。
近未来通信 電話中継局オーナー募集から【所有設備が利益を生み出す新システム】新しい通信ビジネスの新局設置費用を負担していただくことにより、その中継局から生まれた利益を継続的に配分する、事業パートナーを募集します。
オーナーの利益は、所有の中継局を経由したユーザーからの発信料と着信料です。パソコン・通信の知識や営業活動などは全く必要ありません。
ここではオーナーという言葉はあるが、起業や独立開業の言葉は一言も書かれていない。しかし、事業参加者募集のページでは、「近未来通信では、起業、独立開業、副業に最適な各種事業の参加者を募集しています」と書かれている。
これは起業を経験した人なら誰もが直ぐ知らされることだが、「パソコン・通信の知識や営業活動などは全く必要ありません」とか、「誰にでも起業できます」などの言葉をみたら、それは真っ当な起業ではないことを認識するべきだ。
起業は、そうそう誰もが出来ないことをするから、価値もあるし、利益を得ることもできるのだ。危ない起業への誘いには、リスクヘッジから一度は起業相談をするべきだと思う。
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