「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたる例なし。世の中にある人と栖(すみか)と、またかくのごとし」
今から約800年も前に鴨長明が方丈記で看破したように、世の中に起こるモノゴトは河の流れと同じで、一見どれも同じく見えるが、どれとして同じモノゴトはない。
起業を考える人間にとっても、この世に起こる似たようなモノゴトの一つ一つが、まったく別のことに見える感性は重要だ。
それは、商品やサービスを買ってくれる、一人一人の顧客が抱えるプロセスがまったく違っていることを認識できる感性であり、当然商品の売り方も商売に対する考え方も、まったく違ったものになるからである。
「世の中は絶えず変化を続けるものである」と云う認識に立つと、起業を考える人間は目の前に次から次に起こるモノゴトに対して、柔軟な頭で対応するせざるを得なくなる。
以前、似たようなコトで失敗したから、近寄らないほうが無難だろう。以前、これと同じようなことで大儲けしたから、今回も美味しい思いをさせて貰おう。このような思いは、誰もがいつも経験すること。
時間の経過の中で、昔の無二の親友が、単に自分を利用しようとするだけの知り合いに変わっていたり、逆に、昔は信用のならなかった人間が、時間の経過の中で信頼できる立派な人間に変貌していたり、河の流れと同じく、時間の経過はモノゴトの本質やカタチを変える。
その変化に対応できることが、起業を成功へも失敗へも導く。
日頃からモノゴトに偏見をもたないで、柔らか頭で取り組む習慣が大切である。
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