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         独立開業

           『 「まさか?」の新聞発行で起業に成功 』

           サッカー界は、6月9日からスタートするW杯ドイツ大会に向け、日に日に高ま
          りを見せている。
           サッカー好きの Y さん(36)は、02年のW杯日韓大会では、ネット上のサッ
          カーサイトで取材情報や観戦記を書いていたが、今回は書き手からサッカー情
          報の送り手として係わることになった。
           彼は、日韓大会とドイツ大会の間の04年10月に創刊された、サッカー専門
          新聞を発行する会社の社長になっていた。

           Y さんが最初にサッカーと係わりをもったのは、中学での部活だった。高校に
          入ってもサッカーを続け、都大会のベスト4に残る強豪高校のメンバーとして活
          躍した。
           大学に入るとプレーヤーからは遠ざかるが、就職した銀行員時代はJリ−グ
          がスタートしたこともあり、仕事そっちのけでサッカー観戦と情報収集にのめり
          込んだ。
           彼は28歳の時に銀行を辞める。バブル絶頂期に銀行に入行したが、在籍し
          た5年間に銀行の経営は悪化し、多くの行員が離職した時期と重なる。

           銀行を辞めて、就職が難しい一時期印刷関係の仕事に就くが、転機は30歳
          の時に立ち上げたサッカーのHP だった。レベルの高いサッカー記事は熱狂
          的なファンの人気を集め、翌年からサッカーライターとしてネットのサイト向けに
          記事を書き始めた。
           W杯日韓大会を前にサッカー人気は盛り上がり、サッカー関連のWebサイト
          や雑誌がそこここにできた時期である。Y さんが、仕事として初めてサッカーと
          係わったはこの時期からだ。
           日本中が熱狂的に盛り上がった日韓大会も終わると、Y さんも次の身の振り
          方を考えなくてはならなくなった。

           Y さんは、ネットのサイト上での情報提供に限界を感じていた。
          しかも、世界のサッカー情報の主流は紙媒体の新聞である。日本だけが、何故
          か雑誌中心になっているが、世界的には珍しい現象だ。
           その理由は、Y さんがサッカー専門紙の発行に向けて最初に企画書を書き
          上げたのが02年8月なのに、新聞発行が正式に決まったのが04年7月と、2
          年近い時間がかかっていることに現れている。
           一言で云って、フリーペーパーの発行と違って、有料の新聞を発行することは
          大変な資本とマンパワーを必要とするのだ。
           最初に新聞制作のためには、ライターと編集者が揃わなくてはならない。広告
          を取るための営業の人間もいなくてはならない。次いで、そこで出来上がった
          記事を紙媒体に完成させる印刷会社が必要になる。
           出来上がった新聞を販売場所に運ぶ運送会社とも契約しなければならない。

           特に有料新聞の場合、最大の問題は販売所の確保である。通常、宅配の新
          聞の場合は専属の販売店を新聞発行会社が抱えているが、Y さんの場合はと
          てもそこまでの資本力も実績もない。
           そこで当初は、駅の売店とコンビニでの販売に専念した。現在では、関東・甲
          信越、静岡市、新潟市の駅売店とコンビニにおいてサッカー専門紙が買える。
          またこの地域では、販売店からの宅配も可能になった。
           これまで新聞の発行と云うと、有力な企業や個人が試みては夢破れる、挑戦
          と失敗の繰り返しだった。最近は挑戦する人さえほとんどいなかったが、Y さん
          のサッカー専門紙はそんな中での快挙だ。
           学校時代のサッカー経験と、銀行員生活で培ったマネジメントと、印刷関係の
          仕事でのDTP(卓上電子出版)が重なって、新聞の発行へとつながった。
           自分のそれまでの経験を生かして起業に結びつけた Y さんには是非とも、販
          売区域の全国制覇をしてもらって、新聞業界の常識を打ち破ってもらいたい。

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