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独立開業
『炭と七輪でネットショップ開設』

都会では最近ほとんど目にすることがなくなったが、炭の火を入れた火鉢や七輪が置いてある場所には、自然と人が集まってくる。炭の火には、本能的に人を集める不思議な魅力がある。
イベント企画会社に勤めていた大阪市の N(46)さんも、そんな炭の火に魅せられた一人である。
アウトドアライフが好きで、キャンプや釣りで炭を使っての料理が大好きだった彼は、ネットショップで炭の最高級品「紀州備長炭」の販売を始めた。まだ、 週末起業などの言葉もなかった1998年のことである。
ネットショップの草創期ということもあり、奥さんと二人掛りの炭屋さんはけっ こう売れたが、片手間の仕事には限界があった。
しかも、炭だけの単品販売では直ぐに行き詰ってしまう。


Nさんは、2000年に大きく舵を切った。
一つは、会社を辞めてネットショップの専業オーナーになること。40代になっ て人生の大きな方向転換である。
二つ目は、炭単品の販売から、七輪の販売へと販売領域を広げたこと。
炭が「紀州備長炭」なら、炭を燃やす七輪も当然どこにでもある安物では釣合 いがとれない。
他人には真似のできない彼の特性は、飽くなきこだわりにある。
一般に金物屋で売っている七輪は、材質の珪藻土を粉にして金型で押し固め、成型した上で焼き上げて作る焼上げ七輪だ。
彼が探し当てた七輪は、全長500mにも及ぶトンネルの底の地中から切り出された天然珪藻土の塊を、職人さんが一つひとつ削って作る切り出し七輪と呼ばれる最高級品だった。
現在では、石川県珠洲市に3軒だけ工場があるが、そこから仕入れた七輪である。
三つ目は、自宅近くに七輪と炭を売る店舗を開店したこと。


その後は、Nさんのこだわりのサイト作りに滑車がかかる。
炭を使って七輪で焼くものは何故美味しいのか?
色々な食材や炭の量、火加減を試してみてデータをつくり、それをサイトで紹介するすることが、炭の七輪の販売促進になっていて、全国から注文が舞い込むようになった。
特に、秋から冬にかけては、サンマや餅を焼く調理法が人気を呼んで、1個1万円前後の七輪が、月に100個、200個と売れる。
40代、50代、60代の男性にとって、七輪による焼く、煮る、炊く、蒸すの調理は、一種独特の郷愁を誘うようだ。
また、七輪からの発想で、火起し器、酒燗器、ペール缶、柿渋うちわなど、関連アイテムの売れ行きも伸びている。
ネットショップの開設を考える人にとって、ビジネスモデルのような理想的な事業展開をしてきたNさんだが、七輪のオフシーズンとなる春夏に向け、どんなこだわりの商品を売り出すか、今から期待がかかっている。


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