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独立開業
『アスレチックの高齢者向けレッスンプロへの道』

今日もAさん(30)の軽自動車は、国道246号線沿いの世田谷区の住宅街を軽快に走りまわっている。
彼女が向かっているのは、用賀に住む72歳のご主人と67歳の奥さんのお宅。これから二人のお宅に伺って、ストレッチを中心にしたアスレチックの個人レッスンをリビングで行なうのがAさんの仕事。
このような個人レッスンを日に4、5件、週に25から30件行うのが彼女の仕 事だ。
彼女がアスレチックを始めるようになったきっかけは、学生時代にアルバイトとしてスポーツクラブの補助員をしていたこと。高校生までクラブ活動でバスケットボールをしていたが、それほど熱心な学生でもなく、一応レギュラーではあったが、チームも県大会の1,2回戦で負ける弱小チームのだったので華々しいスポーツ歴があるわけではない。
補助員になって、ストレッチやヨガの腹式呼吸法を覚え、俄然身体運動に興味を持つようになった。


学校の卒業時は大変な就職難の時代でもあり、Aさんそのままスポーツクブブに就職。外部の身体運動関連の研究会へ参加したり、著名な先生の個人レッスンを受けてアスレチックのレベルを上げていった。
彼女の転機は、27歳の時に訪れた。スポーツクラブの運営母体だった組織が、過剰投資がたたってあえなく倒産。
他のスポーツクラブへの身売りされることになり、否応なしにこれからの身の振り方を考えることになった。
以前と違って27歳の彼女は、年齢的にも新しいクラブに変わっての指導員勤めは難しい。周りを見渡すと、ほとんどが20代前半の女性ばかりで、男性でも30代を超えた指導員は、マネージャークラスを除くとほとんどいない。
そんなとき、普段の会話から色々相談に乗ってくれた会員としてクラブに通っているNさんから、プライベートレッスンの指導員の話を聞く。
このクラブを辞めた高齢者の中には、自宅でのプライベートレッスンに切り替えている人が結構多いこと。将来、このような高齢者はますます増えそうなこと。彼女は年寄りのファンが多いから、これからでも十分お客さんを作れるとも励ましてくれた。


Aさんがクラブを辞めて一人だけでプライベートレッスンを始めたとき、お客さ んの数は3組のご夫婦。最初は、一人一人のレッスンメニューとユニフォームとバランスボールなどの運動道具を大きなバックに抱え、目黒と世田谷とをバスと電車を使っての訪問だった。
彼女の武器は、本業の色々な研究会に通って身につけたアスレチック知識だけでなく、子供の頃からおばあちゃん子として育った性格がかもし出すお年寄りとの接し方。
彼女自身も、クラブに通ってくるお年寄りが、健康を目的に来るだけでなく、他の人とのコミュニケーションも重要な目的であることを認識している。
現在では、お年寄りのネットワークによってお客さんも増え、会員数32人のプライベートレッスンクラブを運営している。
来年は新会社法の誕生で、彼女のような専門知識のビジネスも新しく生まれる合同会社として組織化が可能になりそうだ。
次の展開に向けて希望をもってAさんは、今日も軽自動車を走らせている。


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