湘南海岸から間近な住宅街、主婦のKさん(42)が住居の一部を店舗にした4坪ほどの雑貨店内は、オルゴールの音色とともにゆったりした時間が流れ、食器やポット、調理器具など約500点がきれいに陳列されている。住宅街で平日の開店ながら、多い日には2、30人の購買客が集まる湘南の隠れた人気店だ。
彼女がこの地に店舗を考えたのは、今から5年前。それまでは社宅暮らしをしていたが、お子さん二人が小学生になっていたこともあり、自宅を新築することになってご主人に長年の夢を持ちかけた。
家庭生活を彩るフランス風生活雑貨の自宅ショップは、彼女が結婚して生活用品を揃える中で自然に芽生えた夢だった。
ご主人も、Kさんの雑貨好きや趣味のよさは認めていたが、自宅がショップということになると、生活面や金銭面で多くの問題を抱えることになる。そこで彼女は、生活の軸足を主婦業において、夏休みや正月は店を休み、営業日も月・火・金・土の週4日で午前11時から午後5時までと、ご主人やお子さんが不在の時に営業することで、ご主人の了解を取り付けた。
また、営業資金についても、仕入れ資金は前月の売上げの範囲内に抑え、家計や金融機関などからの借り入れは一切ない。
現在、収支も小幅ながら黒字基調で、マニーブリュアレーズの食器具やカフェオレ・ボウル、ローズ柄のガラス器、ハンドメイドの雑貨品などに囲まれて、緊張の中にも幸福な日々を送っているKさんである。
最近は、Kさんのような自宅ショップを開店する主婦が急増している。
時間的にも、資金的にも余裕があって、平凡な家庭の主婦だけでは終わりたくない層の女性が、手短に自宅を使ってブティックや雑貨、カフェショップ、食材、おもちゃ、カレー屋などこだわりのお店開店に走るケースが多い。
マスコミに登場するカリスマ主婦と呼ばれる人たちも、スタートは小さなショッ プからだった。別にマスコミから取り上げられることを望んでいなくても、主婦
にとって自宅ショップはある意味の自己主張の場所なのである。
○ 自宅ショップにとって最大のネックは家族の理解である。ご主人やお子さんの協力が開業の大前提となる。
○ 独自の仕入れルートを開発できるかどうかで、自宅ショップの利益は大きく変わる。ライバル店などの事前の研究と、産地とのルート作りには十分時間をかけて準備をする必要がある。
○ 自宅店舗の開設にあたっては、住居の場所の建設用途によって店を開業できない地域があったり、業種によっては許可や認可が必要な業種もあり、事前のしっかりした確認が欠かせない。
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