東京でサービス代行業を営むMさん(49)は、朝早くから夕方まで慌しい毎日を過ごしている。2年前まで、仕事が見つからず陰鬱な毎日を過ごしていたことが嘘のように思えてくる。
総合電機メーカーの家電販売子会社で営業の管理職をしていたMさんが、リスト
ラの一環で実施された希望退職制度に手を上げて会社を辞めたのが2年前。電機
グループ全体が大赤字に陥ったときだった。退職当初は、自分の人脈で家電販売
の営業職としてどこでも雇ってもらえると多寡を括っていたが、昔からの知り合いの伝手を頼ってもどこからも色よい返事はもらえなかった。
Mさんは仕事柄、パソコンを使っての業務も多く、パソコン関連業務は一通り浅
く広くこなすことができた。特に、インターネットやEメールの立ち上げ、ホームページの作成など、知人や近所の人から相談をうけることも時々あった。
先の見えない就職活動を続けるより、人から頼まれることの多いパソコン技術を
利用した仕事を中心に、自営で活路を見出そうと考えたMさんは、自分のホームページを立ち上げ企業向けホームページ制作、データベースの入力代行、営業戦略用の資料収集などPRを始めた。同時に、地元のコミュニテー新聞にも住民向けにパソコン導入相談やホームページ制作の広告を行った。スタート当初はまったく反響がなかったが、3カ月ほどして地元住民からADSL導入の最中に至急助けての依頼を皮切りに、新聞広告とホームページ双方から、問い合わせや注文がくるようになった。
約1年半が経過した現在、収入の半分をネットオークションへの出品と入札の代
行が占めている。ネットを通じて申し込みを受けた出品依頼者の商品の撮影、出品、代金回収、商品発送までのすべてを代行して、30%の手数料を得るビジネスで、不要な家財整理とお宝鑑定感覚で依頼は増えている。そのほか、パソコンを通じた仕事ばかりではなく、近所の高齢者の買い物代行、付き添い、商品の引き取り・受け渡しなどの依頼も喜んで引き受けている。
地元の人たちとの付き合いは、ネットのバーチャルの世界と地元のリアルの世界とのバランスを取るためには必要と笑うMさんは、仕事付き合いでのストレスもなく、健康な毎日を過ごせることが嬉しいと言う。
ポイント
1 Mさんは、パソコン技術を持っていることが、起業の大きな支えになった。
2 企業人から地元住民への気持ちの切り替えがスムーズなうえ、ネットオークションや高齢者の買い物代行など、新しいことをどんどん取り入れるチャレンジ精神が
すばらしい
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